企業の本来の使命
もっと、企業は引き受けた社員の生活や将来を真剣に考えなければならないはずだ。例えば、以前のサービス業は、大卒が少なかった。それは、大卒は給料が高いので、人海戦術がサービス業の基本的な運営方法だから、給料の高い人材はなるべく雇用しない。大卒が給料が高いのは、以前の日本の年功序列という考え方における年齢的なものと、大学へ行ったことによる個人の技術に対する先行投資がなされているという考え方であり、将来的にも企業責任を果たさなければならないという考え方に基づくものであった。
しかし、少なくとも私の知り得る一部のブライダル企業では、一流と思われる大卒を雇用しても、こうした責任など認識もしていないし、それなりの人材の扱いを行っていないからから人材がすぐに退職してしまう。すぐやめてしまうことに関しては、全て退職する者が原因で、自分達企業に責任の一端があるとは、誰も思っていない。この類の経営者は、「なぜ」社員がすぐに辞めてしまうのか、真剣に考えたこともないだろう。この「なぜ」」という部分を真剣に、そして謙虚に突き詰めて行けば答えは必ず出るはずだ。
専門学校や大学を卒業するまでにどこれだけの学費を払っているか、例えば、医者が安月給たったら、高額な学費や時間をかけてまで誰も医者をめざそうと思わないし、就職した会社がある程度その投資と技術に見合う給料を出さなければ、誰も医者になろうとは思わないであろう。ましてや自分のミスに起因する顧客からの損害賠償は個人が負担とするという念書まで書かされたら、その時点でいつ退職しようと考えてしまうだろう。そうした会社は何があっても自分が損をしないようにガードし、本来会社の宝物である社員の育成や将来のステップアッププランなど考えもしないので、社員が愛社精神など持つはずなどない。ミスをする分安月給が更に少ない収入になってしまう。こうした経験を一度でもしてしまったら、その次の日から新たな就職先を探し始めるし、せっかく得た知識を更に磨こうなどと思う前に、ブライダル業界に愛想をつかし、他業界への転職活動を始めるのだ。こんなだから、こうした考えの企業には誰もいつかない。働く若者の根気のなさが辞める原因かと思ったら、企業のこうした現状も大きな一因だったのだ。世の経営者は、いち早くこの現実が間違いだという決断を下し、自分の生計を担ってくれる社員を大切にしなければならない。あえて申し上げるが、社員を大切にするということは、必ずしも高い給料を支給するということではない。ある程度生活するのに必要な給料があり、給料以外で満足すれば、人は企業に居つくはずだ。
世の中では、シンギュラリティ(特異点)という言葉が注目され始めているが、いずれにしても2045年に向けてこのような現状は全て排除されていくであろう確度の高い予想がある。この状況になったら、人材の問題や経営の問題で悩む人などいなくなるであろう。しかし、その時までまだ30年近くもあるのだ。誰もがハッピーで暮らせることを望んでいるはずだ。経営者の考え方ひとつで、どんなことでも実現できるので、いち早く個人の幸せとひいては企業の繁栄が実現できる企業体質を目指すべきだと思う。
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