webの記事で、三井物産が32人抜き人事で、社長になった人がいるという記事を見たが、今時、抜擢人事って実際どうなんだろうと思った。日本が、終身雇用の時代でも、年功序列を無視した抜擢人事が過去にもたくさん行われてきた。
私も、過去に1年強で、宴会部の平から、課長、部長へと昇格し、そのホテルのオーナーサイドから昇格が早すぎると、物言いがついた経験がある。私自身、そのホテルに入社したのは、実力のある人にはきちんと昇給昇格で結果を出すという理由からであった。そのホテルに転職した時も、給料だけは高かったのでノンタイトルというわけにはいかなかったのか、シニアスーパヴァイザーという訳の分からないタイトルをつけられたが、当時のホテルの宴会部長としては年齢的にも若い39歳にして、宴会部長になった。
当然、その時に宴会部長は他におり、その方は他部署に降格左遷された。私としても、大変気まずく、人事がそれを察してか、他ホテルの経験も含め30年近くも宴会部門で従事していたその方を全く違う部署に異動した。
自宅に帰って、まだ子供だった娘に、宴会部長になったことを告げたが、どうも頭にネクタイを巻いて、飲んだくれたおじさんくらいのイメージしかなく、大笑いしたことを思い出す。
1989年12月にバブル崩壊が始まり、1998年12月には日本債券信用銀行が倒産し、一部上場企業が年間十数社も倒産するという日本の神話が崩壊し、下剋上が始まった。私もその激動の時代に前述した下剋上を経験し、昨日の上司は今日の部下ということもあったが、その後ホテルを引退し、新たなブライダルに関わる人生の第一歩を踏み出し今に至るが、現状での下剋上は、相当注意をして行わないと企業の存続において危機感を感じる。
下剋上によっておこる功罪は大きく、今日本は世界に類を見ないパラダイムシフトに突入しており、とにかく労働者がいないのが現状である。日本の産業の70%は、サービス業と言われ、サービス業はいわば機械化が難しとされる。団塊世代は、昭和22年から24年の3年間で、800万人もが誕生し、この3年間で、全て退職している。この後の5年間でも約1,000万人の人が退職するが、ここ十数年出生数も低く、差し引きしても400万人近くの労働人口が市場からいなくなる。
長寿となり、GDPはさほど減少せず、労働人口だけが減少する現代において、どこへ行っても人がいないのは当たり前だ。この先の日本企業の選択肢は、外国人労働者を使うか、高齢者の再雇用、若しくは生産性の高い人材育成という選択肢しかないのだ。ブライダル業界は、現状、商品の性質上後者の選択しかないと思われる。
抜擢人事を行うことは、勿論必要なことだと思うが、抜擢人事を行うことで飛び越えられた人たちは、必ずしもハッピーではないはずで、中にはクーデターを起こすような人も存在するかも知れない。抜擢人事と並行して、飛び越えられた人たちのケアーも行わないと、企業が安定しない。戦後日本は、終身雇用にならされ、特に大企業や優良企業ほど今でも終身雇用の現実は身近で、そのスピリッツは脈々と生きていることに注意しなければならないと思う。
ブライダル業界には、この終身雇用という考え方は少しもないし、私が小僧だったころから少なくともホテル業界では、ヘッドハントされてなんぼのもんだという感覚が強く、終身雇用など考えもしなかった。むしろ、いろんなホテルを移り歩き、ホテリエとしてのノウハウを集積することに価値観を覚えていたと思う。
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