ぼったくり」という言葉を聞いてもさほど驚かないほど、今の社会に蔓延しているように思う。なぜ、日本がこのようになってしまったのだろうか。少なくとも、私が社会人として分別がついたころには、ほんの一部の、悪徳業者と呼ばれる企業しかこんなことはなかったはずだ。
そもそも「ぼったくり」というと、かなり犯罪的匂いのする言葉だが、その意味はというと、サービスや商品を、それに見合わない大幅に高い価格で販売する行為のことである。
では、「見合う」か「見合わない」かを決めるのは何だろうか。
商品には、物としての絶対的価値と、ブランディングやストーリーや薀蓄といった、付け加える価値がある。前者が同じものでも、後者によって最終的価値は変わる。そして、商品を売ろうとしたとき、その商品に対する知識や薀蓄はもとより、その商品や会社に対する愛情がないと、なかなか消費者に伝わらないものだ。
日本は、愛社精神というものを支えてきた、終身雇用、年功序列型賃金、手厚い福利厚生といった仕組みを、バブル崩壊と共にことごとく捨て去った。現代の若者に愛社精神はありますかと質問したら「は?それって何ですか?」と問い返されそうで、怖くて質問すら出来ないが、そういった一見浪花節的な精神が熱意と愛情となり、商品の価値を産み、安定的かつ革新的に企業を継続する力となるのだ。
お客様に美味しいものを食べさせてあげたいと一心に願うシェフを私はたくさん知っているが、彼らの作る料理に込められた愛情は圧倒的なものがあり、食べるたびに感動する。愛情や思いやりは、本当に人の心を動かすものだと思う。
最近、大手ハンバーガーチェーンの不調や牛丼チェーンの価格引き上げなどが注目を集めている。これらの業態は、以前は、「そこそこのサービスを安い価格」で提供できた現実があったが、安倍首相がアベノミクスの名のもとに推し進めた円安誘導によって、輸入品の価格は急上昇し、原価を引き上げざるをえなくなっている。いわゆるデフレ依存型サービスは、もはや成立しなくなってきたのだ。
物価と人件費が上昇すれば、今後存在しえるのは、「それなりの値段はするが値段以上の満足度を与えられる」商品やサービスである。
そうなると、現場に直接かかわりを持たない本部が、現場を無視した商品企画や仕入れを全て行い画一的に提供する大手チェーン店では、その商品やサービスに高付加価値を見出すのは限界があり、逆に、毎朝自分で市場に仕入れに行って勝負するような個人経営の店や、サービスを追求する個人事業主のような形態のほうが強くなるであろう。
この状況の中、デフレ依存型から抜けられない企業や、高付加価値で勝負出来ない企業には、「そこそこのサービスをそれに見合わない価格」で販売するという選択肢しかなくなり、結果的に、いわゆる「ぼったくり」的な販売手法となってしまうのである。
ブライダル業界においても、この15年間の流れをみていると、ぼったくり路線を進んできた企業も多いように見え、その過程でスタッフをプロに育てることもせず、現状においても、高額な割引販売を行っているが、まさにデフレ依存型であり、時代に反する手法で、今後は淘汰される販売手法と言っても良い。実際に、非常識な割引販売に対する消費者の不信感は、当協会におけるお客様の相談内容からも十分に伺える。
では、この体質から脱却し、安定経営をするためにはどうすればいいか。
抜本的改革のためには、システムや会社のポリシーから全て作り変え、教育をし直すことが望ましい。勿論、一朝一夕にはいかないが、人を徹底的に再教育するしか生き残るすべはないと思う。
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