40歳頃だろうか、私は、自分の将来に非常に不安を覚えた時期があった。
それは、一心不乱にホテルに命を捧げんばかりに仕事をし、ホテル馬鹿でホテルのことしか知らない自分に対する不安と、定年後、20年間も働かないで、本当に暮らしていけるのだろうかという定年後に対する不安だった。
私の実家は鉄工所を営んでおり、亡くなった父も、70歳を過ぎても事実上現役だったので、なおさらそう思ったのだと思う。
その後、私はホテル業界を引退し、自営業を始めてから11年目になる。
現在、GDPは緩やかに減少し、労働人口もまた減少している。2000年の頃と比べるとこの15年間で約200万人もの労働人口が減少しており、2000年当時の失業率は、今よりも1ポイント以上高いことを鑑みても、人手不足の波は確実に進行している。厚生労働省の統計予測によると、15年後の2030年には、2012年と比較して、労働人口が約450万人も減少すると予測している。
一方、最近の若年層のサラリーマンの給与を聞くと、その2極化の現実と、低層の低さに驚く。しかし、中には、実際に作業効率などを考えてみると、まあそんなもんかとも思うケースもあり、人が変わったのか、システムが変わったのか、はたまた企業の考え方が変わったのか、現場の仕事効率は明らかに低下しているところが多い。
人手不足と嘆いているところも多いが、業務量との比較で考えると、現場のスタッフの数は以外に多いところも多く、数よりスキルの低下の方が問題であるように思う。
改めて言うまでもなく、日本は世界で最も老齢国であり、過去に経験したことがない長寿から引き起こされたパラダイムシフトが、構造的な人手不足を引き起こしているのが現実であり、現場に本当の意味でのプロを増やせば、その技術と、プロとしてのプライドによるモチベーションの高揚によって、効率的な業務が行えるようになり、現状の人手不足は多少なりとも解消され、安定的な運営が出来ることは明らかだ。
企業は、どこでも、基本的に「続ける」ことを願っているが、そのためには、この労働力問題を解決しなければならない。
ブライダル業界でも全く同じことが言え、今から対策を講じる必要があるが、ブライダル業界の抱える大きな問題は、急拡大によって本当のプロのいない現場が急増した中で、どのように教育を施し、スタッフのプロ意識を高めるかであろう。
今後、ブライダル業界がどのように変化していくか、予想は難しいが、少なくとも装置産業であることは当面変わらないだろうし、婚礼実施件数が減少することは間違いなく、スタッフの雇用の在り方は大きく変化せざるを得ない。
私の運営するIWPA国際ウエディングプランナー協会は、ここ数年「フリーランスプランナー」の育成に注力してきたが、次のステップとして、今後は、体系的な教育を受け、豊富な知識を持つ「資格取得プランナー(Licensed Wedding Planner)」の養成という観点に比重を置いていく。
高い知識と豊富な経験をベースに、顧客満足を追求するプロの集団を目指すためだ。海外には、見習うべき結婚式の素晴らしい慣習もあり、そうした知識も実務レベルで啓蒙、活用すべく、様々な形でウエディング会場とのコラボレーションを行っていく予定である。
また、当協会に所属するフリーランスプランナー達は、一人事業主として活躍し、顧客の高い満足によってのみ成り立つ顧客開拓手法をとっている。量販店が進出しても絶対に倒産することのない、町の小さな電気屋さんのビジネススキームとよく似ており、これこそが本来の婚礼ビジネスの本質であると考えているのだが、今後の市場の縮小の現実を鑑み、会場と協力を更に活発化できる環境を整えたいと考えている。
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