最近、ブライダル業界内外を問わず、様々な人とお会いする機会が多くなり、そこで必ずと言っていいほど出てくるのが人手不足の話題である。「どうしてこんなに人がいないんですか」とよく質問される。
私は、経済学者でもその道のプロでもないので、本当のところは正直分からないが、いろいろなことが短期間のうちに劇的に変化している結果だと考えている。
いろいろなことの一番は、やはり少子高齢化による労働力の減少という構造的な問題だと考える。日本の産業のおおよそ7割を占めるといわれるのがサービス業であり、製造業のような「モノ」の市場では、海外でも生産できるが、「コト」を提供しているサービス業は、その大半が、顧客の近くで人が動かなければならず、いわゆる人間による労働の割合が大きい労働集約的産業である。現代は、「モノ」より「コト」が大事と言われており、よりその影響は大きい。
こうした要因による労働力不足というのは、おそらくかつて経験したことのない現象である。なぜならこんなに人間が長生きした歴史は過去にないからだ。2013年の日本の平均寿命は男性80.2歳、女性86.6歳で女性は世界1位であり、34位79歳のアメリカを除く先進国では、殆どが80歳を超えていて、世界的に長寿である。また、出生率でみると、日本の出生率1.4は、世界の平均2.4の中にあって179位で、アメリカ2.1、イギリス1.9などと比べても低い。
皆さんも記憶に新しいと思うが、ある大手居酒屋チェーンが、店舗の約10%を閉店したが、その理由は、いうまでもなく慢性的な人手不足による従業員の労働環境の悪化だという。また、それを解消すべく、2014年4月の新入社員を240名予定していたが、実際には120名しか採用できなかった。他にも、大手飲食店チェーンで、一時100店舗以上の一時休業や時間帯休業に追い込まれたが、これも同様の理由であった。
今、売上高が前年比横這いかマイナスであっても、人手が猛烈に足りないという現象が起こっている。GDPや企業の売り上げが緩やかに減少しているのに、極度の人手不足が起こるというこの状況を不思議に思うのは、過去の体験による固定観念である。高度経済成長期には、急激に需要が増えたため、供給を増やそうとした結果として人手が足りなくなったし、バブル崩壊によって、急激に需要が落ち込むと、供給を調整する過程で人手が余った。しかし、今、私たちが直面している状況は、高度成長期やバブル崩壊時のどちらにも該当しない。
この状況に対して、供給側の生産性を高めることが、一つの対策だと考えるが、それだけでは完全に解決することはできず、今後、試行錯誤をしながら取り組んでいかなければならない、社会にとって非常に重要な課題だと思う。
解決策はそう簡単には見つからないかもしれない。
この問題は、少子高齢化が世界最速で進む日本で、他のどこよりも早く起っている現象で、日本は人が余っていた国から、ごく短期間に、人が足りない国に変わった。これは、長寿国という従来の歴史にはない初めての状況であり、常識からは想像できない事態が起こっているからだ。
しかし、ただ手をこまねいていても、ビジネスはどんどん進んで行くわけで、今打てる手を打たなければ、前出の飲食チェーンのような事態がそこらじゅうで起こるようになってしまう。
当然、ブライダル業界においても例外ではなく、抜本的な対処法を考えていかなければならない。散見される「使い捨て」的な人の使い方をすると、もう代わりはいないのだ。これを改め、教育の充実などを計り、ECを高め、安定した人材の確保を目指さなければ、ビジネスとして成立しなくなってしまうようなことになってしまうであろう。
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