もう1年近くにもなろうか。インターネット仮想商店街「楽天市場」の、プロ野球楽天の日本一を記念した優勝セールで、不適切な価格表示がされた問題があったが、どうしてこんなことが起きるのだろうと疑問に思った方は多いのではないだろうか。
この状況は、現在の日本の社会全体の姿を反映しているのだと思う。今や、老舗や上場企業の商品だから安心できるという時代ではない。また、お得感を演出するためのすり替え広告が氾濫しており、消費者が賢くなければ騙される世の中になってしまった。
私は現在品川に住んでおり、自宅は20数年住んだ土浦にあるが、歩行不全の体を引きずっても床屋は20数年来通った土浦に行く。私は、実は小学生の時から母の薦めでパーマをかけており、もう40年以上もかけ続けている。
パーマには、基本的にはロットとアイロンがあり、普通パーマというとロットの事で、アイロンには、アイパーとかパンチとか元巻などの種類があるのだが、私はこの20年近くの間、元巻パーマをかけており、この元巻パーマの開発者の一人が、私が通う土浦の理容店ルポのマスターの大垣さんである。
髪を濡らすとカールするのがロットパーマ、元巻は、逆に乾かすとカールするのだが、乾かすだけでセットが不要な元巻パーマは、私のような病気で左手が不自由な人にとっては、かけがえのないものである。
元巻パーマは、一般には髪を高熱で処理するもので、高温のために、そのときはかかりがよいのだが、時間が経つと髪の毛が傷み、ボロボロ切れ毛になって最悪の状態になってしまう。ところが、大垣さんにお願いすると、髪の毛がボロボロになったことなど一度もない。大垣さんいわく、アイロンパーマの技は、低温やけどと同様、低温でじっくりかける方が定着度が高いのだという。
お客様の事を本当に考えるのであれば、3時間以上の時間をかけてかけるほうが良いが、現状、理容店側としては時間をそんなにかけるのは効率が悪く、面倒なので廃れてきたという。しかし、彼は、顧客の事を考えるならば、仕事の効率ではなく、技術の向上が大切だといい、私は20年以上彼の顧客として毎回大変な満足を得ているのである。
また、少し前に、秋の秩父を訪ね、クリオステーブルという牧場のオーナーの犬木さんに本物の調教とはどういうものかという話を聞いた。犬木さんは、テレビなどでも活躍されている本物のホースマンシップを持つ人物なのだが、その調教法は耳を疑うほど凄いもので、正に本質というか、目からウロコが落ちる話であった。
日本の馬の調教では、競走馬の調教に代表されるように、馬を人間の意のままに動かすには、ムチが必須のもののように考えられているが、本来の調教はそうではなく、馬と付き合い、自然の摂理に習い、馬との間に本当の信頼関係を築くことにあり、そこに至るまでには3年はかかるという。馬に蹴られたり、馬がちょっとした物音に暴れ出して人を振り落としたりするのは、信頼関係が築かれていない証拠で、犬木さんのところの馬は、街中でどんな衝撃的な音が出ても暴走するようなことはないそうだ。大木さんが育てた馬は、自分で判断して人を守れる程賢く、ホースセラピーで活躍し、心や体に不具合を持つ多くの人々を癒している。
理容師の大垣さんにしても調教師の犬木さんにしてもプロとしての目と技と魂をもって商売をしている。
このようなプロの手にかかると、客は否が応でも大満足させられ、お金を払う時でも、本来こちらが客なのに、自然と感謝してしまい心から「ありがとう」という言葉が湧き出てくる。商売とは、本来こういう風にあるべきではないのだろうか。
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