連載原稿82 常識・本質に立ち返り、ビジネスを見直す時期

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一般的に、品質の良いものは販売価格も高い。人もまた、「人材」という売り物になると、良いものの報酬は高い。

この、商品価値が高ければ価格が高いのは当たり前のことなのに、デフレ時代が長く続いたせいか、ブライダル業界でも、今は高価な物は売れないと思い込んでいる節があり、販売する側は、安くすることで購買力を高めようとしている。

しかし、「高価な物は売れない」と思うのは、誤った思い込みである。単に価格が高いから売れないのではなく、「商品価値に対して価格が高い」と消費者が感じるから売れないのだ。

散見される現状のように、販売する人が自分の商品の蘊蓄も本質的な価値もわからず、販売商品に対する愛情もないのでは、消費者に商品価値を理解させることはできない。値引きをしなければ売れないなら、そもそも値引き後の価格分の価値しかその商品に感じてもらえていないということで、これは有名ハンバーガーチェーンの現状をみても明らかであろう。

反対に、商品価値の方を、消費者が価格から求めるところまで高め、販売することをなぜ考えないのだろうか。

また一方で、一部の会場は業者に仕入れ価格を下げさせることで利益を上げようとするが、それは単に目先の儲けを確保するための安易な付け焼き刃的な手法に過ぎず、経営者の義務の放棄であり、一時しのぎに過ぎない。原価を落とすことは、品質の低下を招き、結果的に顧客の満足度を下げてしまうからだ。

このようなビジネスの破綻は必至で、実際、業界でもささやかれ始めたが、このビジネスモデルをとるカテゴリーは、現実との乖離が大きくなり、成立しなくなりつつある。

ブライダル業界の現状は、仕入れ原価の縮小だけではもはや対応できなくなってきている。市場規模の縮小に合わせた新しいビジネスモデルの構築をしないで従来のビジネスモデルに固執してむりやり継続しようとすると、ブライダル業界自体が客離れを引き起こし破滅へと追い込まれてしまうだろう。

非常に大げさに聞こえるかも知れないが、この危険なビジネスモデルで実質行っている会場は、全国的シェアから言うと確実に過半数を超えており、決して大げさな状況ではないことを理解して頂きたい。

弊社も業者の立場でお付き合いいただいているお取引先は多いが、納入価格が下がっても、原価は決して下げない。なぜなら殆どの商品が人材に関わる商品で、この部分を下げてしまうと商品力が低下し、弊社自身の評判を落とすことになるからだ。もし、その結果として経営的に破綻する危険が生じたときは、その事業を辞める覚悟はしている。

今後、ブライダル市場では、市場規模の縮小によって、衣裳などのダブつきも予想されるところだが、最近の物の販売を見ていると、市場のニーズやウォンツに応えて生産、販売しているのではなく、現状ある物をどう利用していくかという、いわゆる在庫処分的ビジネスを、いかにも新ビジネスと言わんばかりに、スタートしているところもある。

しかし、現代の若年層の消費者の志向・消費行動パターンからいうと、在庫処分的なビジネスは、魅力のない物であり、そのようなスキームのビジネスは成立しない。「余っています、お安くしますからどうですか?」と販売する方の都合を押しつけても、彼らは、その物に価値があるかどうか、また、その価値を自分が得たいと思うか、ちゃんと判断するのである。

基本、普通、常識、本質といったところに立ち返り、もう一度現状のビジネスを見渡すことが必要な時期ではないかと思う。

私自身も、複数の会場の運営に関わっているが、自分自身もきちんと襟を正し、基本に立ち返って業務に当たらなければと深く考える時期だと思っている。

 

 

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