後継者のいない職人の世界は多いという。「職人の技」は、感動を呼ぶものが多く、若者が見ても「凄い」と感動はするが、それが自分とオーバーラップすることはなく、昔の徒弟制度のように、安い給料からひたすら努力を重ねて物事を極めようという若者は激減しているようだ。
さとり世代の人たちは、苦労をしてまで俗にいう偉くなりたくないし、名声や富にさほど執着心がないらしい。では、何を目標にして生きて行くのだろうかと思ってしまうが、そんなこともさほど考えてはいないようだ
ウエディングプランナーも、婚礼の仕事を極めようと思ってなった、というより、この会社に入れば何か面白いことが出来るかも、というくらいの気持ちで入社する若者が増えているという。
こんな状態なので、自分のしている仕事の意味を深く考えたり、よりよい物をとことん突き詰めようという意識に乏しいのだと思うが、今さえよければいいとばかりに、価値の見合わない高額商品でも容易に売ってしまうような現状に、業界の将来への不安を感じる。
お客様にとって大切な商品や本当に感動させる商品とは何かということは、自分をお客に置き換えれば分かるはずである。例えば、披露宴で大事なことは、出席者をおもてなしすることであり、それは、矢継ぎ早に演出を繰り出すことではなく、食事や飲物をしっかりと楽しんで頂くことである。
今は、新郎新婦の中座中は、参列者が手持無沙汰になるから何か演出をしなければならないと映像関係の押し売りをするのが営業の定番になっている。しかし、フルコースを楽しんで食べれば2時間程度はかかるもので、披露宴の最初から最後まで映像演出で一杯では、落ち着いて食事も出来ないだろうと思う。
本来であるならば、新郎新婦の中座中、ご提供する「時間」もおもてなしなのに、暗い中、映像を見ながらの食事では何を食べたのかもよくわからず、その後も演出続きであっという間に披露宴がお開きになってしまい、振り返っても映像の印象しかないという、感動や感激とは程遠い披露宴になってしまうのが、利益重視型ビジネスの披露宴の形である。
こんな現状で、披露宴の価値を創出できないことが、結婚式の減少の一因にもなっているようだ。勿論、売上を上げることは重要であり、高単価の披露宴と低単価の披露宴のどちらかを目指せと言われれば、ビジネスとしては当然前者だろうが、今や、無婚つまり売上0円が選択肢なのであり、ならば当然、FB中心の低単価披露宴であっても、当然こちらを選択するべきであろう。
今、大事なことは、どんな層の人でも披露宴が出来るよう、商品ラインナップを揃えることではないだろうか。お金のある人もない人も、その人に応じた披露宴を行えることの方が、将来のブライダルビジネスには重要なはずである。
ブライダル業界の一部は、固定観念からなかなか柔軟な考えが出来ないが、これは、現代のスピード感がわかっていないということで、市場のウォンツに対応できないということである。
例えば、大都市圏では全額前金が一般的だが、金額によってはどう考えても無理があり、その結果無婚へと導かれてしまう。援助したくともできない親、自分たちも生活で精一杯の新郎新婦が増えている現状で、平均3万円の御祝儀を充当したとしても80名で残り200万円から300万円という金額を払える客層はどれだけいるのだろうか。
もっと、現実に則した商品作りをしなければならないし、まず手始めに、リスクヘッジを視野に入れ、最終見積金額から想定御祝儀金額を除いた金額だけ事前入金し、残りは当日清算という支払方法を原則として考えるくらいのことは検討しても良いのではないだろうか。
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