私は、国語の先生でも有識者でもないが、近頃耳障りな言葉遣いを多く聞くような気がする。
以前から、駅のホームで、「間もなくドアが閉まり(●●●)ま~す」という他人事のようなアナウンスを聞いて、ドアは車掌が意識的に閉めるのだから「ドアを閉(●)め(●)ます」というべきだと思っていた。些細なことのようだが、客の心証は、このようなことで全く変ってくるものだ。
50年以上も生きてくると、いろいろなことが気になるが、最近特に違和感を覚えるのが、「御」の読み方である。「お」「おん」「ご」「ぎょ」「み」などと読み、物や行動を表す漢語につけて尊敬語や謙譲語をつくる接頭辞であるが、耳に入る会話の「お」と「ご」の使い分けに、特に違和感を覚えてしまう。
「ご祝儀」が正しいのか、「お祝儀」が正しいのか、我々世代は、「ご祝儀」が正しいに決まっていると思うが、最近の会話を聞いていると「お祝儀」と言っているのを頻繁に耳にする。いつから、どうして「お祝儀」というようになったのだろうか。
実は、「ご」と「お」の使い方には、法則がある。中には例外も存在するが、基本的に、下につく漢語が音読みの語には「ご」、訓読みの語には「お」をつけるのである。
例えば、「名前」は訓読みなので、「お名前」であり、「ご名前」とは言わないし、「仏前」は音読みなので、「ご仏前」であり、「お仏前」とは言わない。下につく語が、湯桶(ゆとう)読み(よみ)(上の漢字が訓読み+下の漢字が音読み)や重箱(じゅうばこ)読み(よみ)(音読み+訓読み)の場合は、一般的には、湯桶読みには「お」を重箱読みには「ご」を使うことが多いが、基本的には慣用によるものが多く法則に従わないこともあるので一語ずつ覚えておく必要があるが、これは、常識の域であろう。
この法則に従えば、「祝儀」は、音読みであるから「ご祝儀」が正しいということになる。
どうも私が聞いている範囲では、本来「ご」である言葉を「お」に代えて使うようになっていることが多いように思える。
「御人数」も「ご人数」だが、「お人数様」と言っているのもよく耳にする。そもそも「人数」は、そこまで丁寧に言う必要があるのかとも思う。
いずれにしても、常識や良識を身に付け、正しい言葉づかいをすることは、特にウェディングプランナーには必要不可欠の条件であるはずだ。
なぜなら、ウェディングプランナーは、新郎新婦の人生最大といわれる通過儀礼を取り仕切ることを業務としているからである。
通過儀礼とは、子供から大人へ、大人になったら、更に常識を深めた経験や知識が豊富な大人になるための節目の儀式であり、通過儀礼を経験することで、人として取得しなければならない知識や覚悟を自分の経験として、自分の中に定着させるための儀式であり、ウェディングプランナーは、本来そのサポートをしなければならないという大事な義務を負っているはずだ。
挙式・披露宴の打合せを通して、例えば、引出物の打合せの時には、「熨斗紙(のしがみ)は、結納品の長熨斗(ながのし)と同じ熨斗(のし)鮑(あわび)を慶事の贈り物にそえる習慣からきたものだ」、「水引は、結びきりを使うが、これはほどけてはいけないことを意味し、つまり一生に一度しかあってはならないことに使用する、ゆえに、葬儀つまり不祝儀の水引も結びきりを使うが色は違える」というようなことを、雑談の中でたくさん新郎新婦に教示していくことで、新郎新婦は通過儀礼を果たし人生の高い階段を一段上って一人前の見識を備えることができ、ウェディングプランナーに信頼を寄せるのである。
このようなことが出来て初めてプロのウェディングプランナーと呼べるのだと私は考えている。
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