会場は、いつの時代も新規来館数をいかに増やすかに注力してきた。
ブライダルは、もともとその会場の、ブランド力、建物の外観・内装、人材、料理、アクセスといった様々の要素全般の総合力が受注を支えてきたが、それは今も変わることはないはすである。
しかし、ビジュアル系ブライダル情報誌に集客を頼り切ってきたこの十数年の流れの中で、総合力からビジュアルで表現できる特定の範囲が偏重されるようになったのは否めない。今や、数百ページにも及ぶ情報の洪水の中に、各会場の情報は埋もれてしまい、あたりまえの広告を出すだけでは新規来館数の増加にはつながらなくなってしまった。そして、その対策として、現実にはありえない豪華な装飾を施した会場の写真を撮影して掲載するようになった結果、新規来館数は増えたが、来館決定率は反比例して下がる会場が出てきた。これは、当り前であるが、写真と実際のギャップが大きいことが理由である。結局、広告宣伝費は増えたが、その広告費に見合った効果は得られないという事態に陥ってしまったのである。
それではというので、来館決定率を上げるために、今度は、とにかく物珍しいと思われるような演出を新郎新婦に提案するようになった。
しかし、「提案」は、重要な販促行為であると誰しも思っている風潮があるが、今一度よく考えてもらいたい。
新郎新婦からのヒアリングなしの提案は、提案ではなく単なる押し売りである。随分以前からホテルウェディングは「お仕着せウェディング」と揶揄されてきたが、新郎新婦を置き去りにした「提案」は、陳腐なだけで、お仕着せウェディング以下である。
今のプランナーには、提案と言えば、イコール演出と理解されているようなふしがあり、その提案の元は、業界紙など業界内部の媒体の情報である。しかし、そういうステージで紹介されている商品は、ある種、業者の都合で作った演出商品が多く、新郎新婦が望んでいる物とは必ずしも一致しない。なぜなら、それは売り手側の商品ありきの発想であり、本当の新郎新婦のニーズから生まれたものではないことが多いからだ。そうした商品をいくら「提案」しても、新郎新婦には全く響かない話となってしまう。そうなると、新郎新婦は、自分たちの為の提案ではないと判断し、会場やプランナーに信頼を置かなくなり、決定には至らなくなるのである。
そろそろ、自分たちが行っている「提案」が、本当に顧客のことを考えたものなのか、自分の頭でよく考えてみなければならない。そもそも、新郎新婦が求めるプランナーの仕事とは何かということを再考する必要がある。
このような現状が続くと、その会場の新規来館数は益々減少し、来館決定率も低下し、いよいよもって負のスパイラルに入っていくであろう。
ブライダルは、昔のような「新しいもの好き」とは限らない市場へと変化している。歴史的建造物や古民家での挙式や古い旅館での披露宴も人気で、我々の調査では、新郎新婦がそのような場所を選んだのは、「他の人と違うから」ではなく、「自分たちの価値観に合うから」という理由が圧倒的に多い。今や、新しいこと、ハードが立派な会場であることが、必ずしも会場を決定するときの条件ではなくなってきたのである。
新郎新婦の志向は多岐にわたり、1組ごとにそのニーズを的確に把握する必要がある。挙式・披露宴についての疑問や自分たちの話を聞いて貰いたくて会場訪問したのに、一方的に商品を勧められたり即決を迫られては、会場に対して不信感を覚えるのは当然である。新郎新婦の婚礼離れを招いているのは自分達の応対そのもので、その対応を是正しなければ、ブライダル市場はますます縮小へ向かうだろう。
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