連載記事18本当の0円プラン

ウェディングビジネスは、今や失速状態で、宿泊が好調なホテルにとっては、婚礼の宣伝広告費や粗利率だけを見てしまうと、重荷になっていると感じてしまうかもしれない。そんな中、本来、宴会のプロであるはずのホテルが、ウェディング部門の運営を平気で外部に委託し、コンプレインがホテル自体の評判まで下げてしまったり、気づいた時には、草木も生えない不毛な畑と化してしまう事例が散見される。

今までも何度か取り上げてきたが、2005年経済産業省特定サービス産業実態調査の、約714千組の婚姻数のうち約351千組しか挙式・披露宴を行わなかったというデータは、今やブライダル業界では周知の事実である。
しかし、この事実が指摘されるようになってずいぶん経つのに、会場は、この「ナシ婚」層に対して、何ら有効な手を打てていないのが現状である。

巷では、何年も何十年も変わらず、競合会場同士で新郎新婦の争奪戦を繰り広げているが、今や敵は同業他社ではなく、「ナシ婚」であることに気付かなくてはならない。

このナシ婚層に対して、従来型の婚礼を行う層に対するのと同じ切り口で訴求しても、当然であるが効果は無い。

先日、日本最大級の婚礼口コミサイトから、「ナシ婚」の人たちに、挙式・披露宴を行わなかった理由を調査した結果が発表されたが、理由の1位は「経済的理由」、ほぼ同率で2位「授かり婚」、3位が「セレモニー的行為が嫌」であった。2位の「授かり婚」もその意味するところは経済的理由であることは自明で、この2つを合わせるとナシ婚の約40%が「お金をかけたくないから」という理由なのである。

このような人たちは、素晴らしい会場のデコレーションには反応しない。はっきりと、「新郎新婦に金銭的負担をかけない」ことを示してやらなくてはならないのである。

私共で運営しているIWPA国際ウェディングプランナー協会では、このナシ婚層に結婚式を行わせるための取り組みのひとつとして、現在ホテル様とコラボレーションを行い、「祝婚」を推進している。これは、端的に言うと、新郎新婦負担¥0の会費制プランである。但し、従来の、基本プランにオプションを追加していくものとは違い、スナップに至るまで、一般的に新郎新婦が披露宴に必要とするアイテムはすべて含み、贅沢をしなければ他に追加する物は無い、「○○婚」と言われるものとは主旨が全く違い、あくまで「無婚層」に訴求するための本当の負担0円プランである。

このプランを実施するためには、色々な考え方の変更が必要になる。まず、会費制なので、内金や申込金などはなく、精算は全て当日となる。また、会費は20,000円程度であるから、ホテル収入となるFBRSは、せいぜい10,000円強程度である。

そんな金額なら婚礼じゃないとお考えの方は多いと思うが、その通りで、一般宴会として考えれば、11,000円単価で、60名以上というのは美味しい宴会だとは考えられないだろうか。当然、日時曜日は限定されるものであり、しかも、打合せは、IWPAの資格認定フリーランスプランナーが行うので、打合せ人件費も不要ということを加味すると、GOP率も高くなるであろう。「婚礼」という亡霊に縛られて1か0かの選択をしなくても、少しの転換が新しい道を開くこともある。実際、婚礼をもう止めてしまおうと考えていたホテルで、このプランを取り入れるところが出てきている。

前にも述べたが、ホテルは生涯顧客を獲得することが重要であり、婚礼特化型会場のように、近視眼的に婚礼だけで利益を完結させる必要はないのである。とにかくお客様に親しんでいただき、信頼していただき、ご愛顧いただける顧客になっていただくこと、そこに、間違いなく将来のビジネスが生まれるのである。

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