私は大学生の4年間を町場のレストランでその大半をアルバイトに明け暮れていました。まともなサービスを提供できるようなレストランではなかったので、本物のサービスとはどんなものかを追求したくてホテリエを目指しました。
そこで見たものは、自分の想像をはるかに超えるものであり、そのノウハウを学べば学ぶほど、どんどんのめり込んでしまいました。
最初に就職したホテルには本当に感謝しており、在職中の3年間で人事・総務を除く全セクションで学ばせてもらい、料飲部門では、宴会サービス、宴会予約、レストラン、バー、ラウンジ、宿泊部門では、ベルボーイからハウスキーピング、フロント予約やフロントキャッシャー、フロントクラークに至るまで、一つ一つの仕事を短期間にマスターできました。それはプロの領域に達するまで厳しい訓練の連続でした。
毎日が学びで長時間労働でしたが、家へ帰ってからも毎日2~3時間は勉強しており、短期間にプロの領域まで達するためにはそれでもまだ時間が足りなかったことを今でも鮮明な記憶として覚えています。
現在のサービス業界はブラック化が問題になっていますが、現状の意味で言うならば私達の頃はもっとブラックだったと思います。それでも魅力ある業界で、それはやはり顧客も社員もサービス業の原点や本質を求め、そこに育まれた人間同士の思いやりや感動が存在し、会社としても人財育成にかける情熱も強かったからだと思います。
しかし、いつしか企業はスペシャリストよりゼネラリストを好み、その結果モチベーションが低下しサービスクォリティが低くなりましたが、それでもホテルは他と比べて人間味が残されていると思います。
しかし、私も今はホテルを利用する立場ですが、若干不満を覚えることも多くなり、以前はもっと柔軟的だったと思うし、それがサービス業の頂点であるホテルの懐の深さだと思っていましたが、マニュアル化に徹した運営を肌で感じると少しさびしい感じはします。
私は、葬儀以外はなんでもこなす宴会マンとして歩んできましたが、特に婚礼部門は興味も強く実績も多いのですが、ホテルにとって生涯顧客を育むビジネスとしては、婚礼部門は最も重要なポジションを占めると考えています。それをGOPが低いので貢献度が低いと判断する考え方は、あまりにも日本のホテルビジネスを理解するには貧弱な思考ではないでしょうか。
ホテルビジネスは、本来人を幸せな気持ちにするビジネスであり、人の幸せに心から嬉しく思うことを仕事のやりがいと考える人が集う職場であってほしいし、そうした人たちが集うホテルが本来一流ホテルなはずです。
こうしたホテルで働くことは、サービス業を目指す人にとって何にも代えがたく、満足の高い充実したホテリエ人生を送ることが出来る絶対条件のような気がします。